2018年11月20日火曜日

授業はカスタマイズ

ベルギーの学校は指定の教科書がないので、授業内容の全ては教員に任されています。
今年私は4つの学校で計16クラスの音楽を担当しています。
9月の1回目の授業で、クラスの雰囲気を感じ取り使う教材を決めていきます。
同じ学年でもクラスに合ったテーマを教材にします。
先生の立場からすると、同じことをやらない分 準備にかかる仕事量が増えて大変なんですが。。。
ベルギーの小学校で音楽の授業がない分、生徒にとってリコーダーとは未知なもので初めて手にする楽器になります。
リコーダーを吹けて誇らしそうな生徒の表情を見るのは本当に教師として嬉しいものです。
でもリコーダーは全てのクラスでやらないようにしています。普段騒がしいクラスでは騒音で大変なことになり兼ねないからです。
そうしたら今日、2つのクラスの生徒達に 「マダム、僕たちはなぜリコーダーをやらないんだ。僕たちもやりたいんだ」と言われました。
それも普段発言しない静かな男の子や、不良の女の子が言うのです。
音楽の授業なんてどうでもいいと思っていると思っていた子の発言にはびっくりしてしまいました。
多数決をとり、結局リコーダーを始めることにしました。

ピアノやチェロの個人レッスンの生徒さんも一人一人の性格に合った教材を選んでいます。
市場にはありとあらゆる教本が出回っているんですが、教本の進み方にそれぞれ特徴があり万人に合う完璧な教材はありません。
だから生徒さんをよく知り、レッスンをカスタマイズしているのが私の音楽教室の特徴かと思います。




2018年10月19日金曜日

貴重な一年

こちらの中学では音楽の授業が1年間しかありません。小学校でも音楽が義務教育でないので、中学で週1の授業はとても貴重な時間になります。

新学期が始まって1ヶ月半経ちました。

今日は昨年の教え子に偶然メトロで会いました。ウクライナ人の彼女はクラスでとても大人しく、ほとんど発言もしませんでした。

その子が近づいてきて、小さな声で 「先生の授業はとっても良かった。」とボソッと言うのです。

「今年は先生の授業がないから寂しい」と。

それから彼女は兄弟が10人いて、お兄さんがトランペットを昔吹いていて、、、と語り出しました。

なんだか胸が熱くなりました。

週1時間の授業で1年間の授業ではやれることが限られてしまっています。それでも、教え子達が、マダム タキノーといって声をかけて集まってきてくれるので、生徒達の中に何かが残ったんだなと思うわけです。

授業中はなかなか一人一人に声を掛けられないけれど、できるだけ生徒の心の声を聞いていきたいなと思う毎日です。



2018年6月30日土曜日

つまずいたっていいじゃない

6月最終日。学校は最後の最後まで会議です。

先日成績表が渡されましたが、その結果に満足できない生徒が申し立てをした場合、先生達はまた審議会議をするわけです。午前中はその会議のため先生全員集合。

11教科中2教科しか合格していない子が、平気で申し立てをしてくるわけです。

彼らの言い分としては、家庭内事情が複雑だったら勉強に集中できなかったから成績が悪いんだ というものが多いです。

親が離婚したとか、兄弟が事件に巻き込まれていた!とかドラマチックな背景があって本人の責任ではないのは仕方のないことです。

それなら尚更もう一年留年して基礎学力をつけましょうというのが先生側の意見です。

急いで次に進もうとしても、基礎ができていないとそこでつまずくのは本人です。

それは音楽でも数学でも同じで段階を積んで基礎を積み重ねていかないと次のステップには行けないわけです。

先日は16歳でやっと小学校修了試験に合格した子を送り出しました。

人によって能力は様々でしょうが地道に進むのが一番近道なのです。




2018年6月26日火曜日

学年末、泣く生徒 笑う生徒

ベルギーのフランス語系の中学では先週一斉に政府が指定した試験が行われました。それをCEB とCE1Dと言います。小学校の後は2年毎にこの大きな試験を受けることになります。

主要科目はフランス語、数学、地理、理科。この政府の試験に受かれば次のグレードに上がれることになります。

先週末から成績会議が行われ生徒一人一人の進級を判断しています。

成績会議は音楽を含めた全科目11教科の一年分の成績がばーんとスクリーンに映し出され、学長、心理カウンセラーなど総勢20人で生徒について話し合います。

11教科の成績表はパズルのように合格は白、不合格は色が塗ってあるので一目瞭然で成績がわかります。

一面真っ白という生徒は学年に4ー5人だろうか。。。

生徒の態度、家庭環境、進路、学力、あらゆる面から一人一人のオリエンテーションを決めていきます。

私の勤務校は問題児だらけなので、政府の試験の合格率は30%。低すぎる。。。

と言うことは 30%は進学校に進めるけれど、残りの70%は留年をし、技術、専門職系のコースを選ばざるを得ないことになります。

こんな13歳ごろから手に職系のオリエンテーションをするのはベルギーではごく普通のようです。(少なくとも私の勤務する3校は、みんなこんなレベル)

成績会議は何日も、何時間にも渡って行われるので先生はクタクタになります。

先生というと、日本では真面目で清楚で勤勉なイメージですが、ベルギーだとタトゥーをバリバリに入れている方や、イケイケの服装の先生もいるので驚きです。みんな飛んでいます。(うちの学校だけか?!)

成績会議の結果は即 担任によって電話で生徒の親に報告されます。そして明日、親と生徒が成績表を取りに来て学生の一年が終わります。








2018年5月17日木曜日

コーランを読み始める生徒

学校では色々なことが起こります。

今日は 教員労働組合の退職金に対するストがあり、それに便乗して交通機関もストを起こしたので生徒は普段の3分の1ぐらいでした。

こんな日は生徒もストに便乗して(?)学校に来ないことが多いです。

クラスによっては一人か二人しか来ないので学校はとても静か。


来月生徒は大切な卒業試験CEBがあるのでこんな日は生徒の少ないクラスは自習になります。

試験科目担当の先生にとっては授業を快適に進める絶好の機会!

音楽はその大切な試験CEBの科目に入っていないので、今日は数学、フランス語、理科、地理の自習をさせるわけです。

でもうちの生徒は自習に何時間も耐えられる子達では当然ありません。


すると一人のあアルバニア人の生徒が ”僕はコーランを読んでいていいですか?”と聞くんです。

??? コーラン ?


話を聞くと彼は今日からラマダンの日だそうで、朝の3時23 分から夜の9時32分まで(だっかたな?毎日時間が変わる)水も一滴も飲まず何も食べないというのが1ヶ月続くのです。

先生としては自習の邪魔にならなければいいので、コーランを読むのを許可しました。携帯で読むのね。

5時限目になるとそれも飽きて来て、クラスがざわざわして来たので、いっそのことラマダンのことを説明してもらおうと思って教壇に立たせました。

彼は本当に得意げに朝から晩までの生活、家族のこと、イスラム教の戒律、踊り、民族衣装などを説明してくれました。当然音楽のことも。

同じコーランでも国によって文化の違いがあり、また男と女では全然違うわけで、他の生徒も興味深げに話を聞いていました。

自分の国の文化を紹介するのは本当に誇らしげで楽しそうでした。

今日いた5人中4人はイスラム教徒だということに気づきました。アルバニア、チュニジア、トルコ、モロッコ。。。

そうか、この子達はあの過酷なラマダンを今日から1ヶ月始めるんだ。
水も飲めない状況だから彼らの体力、精神状態も授業中考慮しないといけないなと思ったわけです。

8歳ごろからラマダンを習い始め、大人と同じように完全断食をするのは10歳ごろだそうです。

今日は生徒のおかげで 思いがけず内容の濃い いい授業になってしまって、あと残りの2週間の授業も彼らの文化に焦点を当ててみようと思いました。